お母さんのおなかの中に芽生えた小さな命、出会える日を心待ちにして迎えた出産、愛おしいわが子を抱きながら幸せな毎日を思い描いたはずなのに・・・。我が子はかわいいし、笑顔で優しく愛情をいっぱいかけてあげたい。でも、実際の育児はなかなか思い通りにはいかないものです。こんなはずじゃなかった、と思うこともたくさんあって不安になって悩んだり、怒ったり涙が出てしまうこともあると思います。
今年度の子育て支援サイト「わわわ」では、それでも一生懸命頑張っているみなさんの心が少しでも安らぐことを願って、児童家庭課 子育て相談員 野田と子育て支援センター 子育て相談員 筒井から「応援メッセージ」をお届けしたいと思います。日々の子育てを振り返ったり、これからの子育てを考えたりするきっかけにしていただけら嬉しいです。
「輪・和・笑(わ・わ・わ)」
核家族が進み、地域のつながりが希薄になってきている社会情勢の中、家の中で母と子だけで過ごし子育ての責任を母が一人で背負わなければならない家庭が多くなっています。今は育児書やネットなどで多くの情報をすぐに得ることができますが、心配ごとや悩んでいることを一人で抱え込んでいては、ますます不安な気持ちが大きくなってしまい、納得できる答えを求めて何時間もさがしてしまうこともあると聞きます。何もかも一人で担わなければならない「孤育て」はとても辛いですよね。
子育てで一番大事なことは困ったときにだれかに『助けて』と言える力だといいます。うまくできないこともあるし、ちゃんとできない時もある。困ったときに「助けて」と声を出して誰かを頼り救いの手を求めることはとても大切なことです。家族やご近所さん、公園や散歩で出会うママ友や先輩ママ・・・まわりの声や手に助けてもらいながら、たくさんの人と関わって、その中で母として少しずつ成長していけたらいいと思います。コロナ渦で人との関りがますます制限されています。距離をとるなど感染リスクを避けることは必要ですが、会話し一緒に笑って和やかな時間を過ごすこと、繋がりを築いていくことは子育てにおいても子どもの成長にも欠かすことのできないことだと思います。周囲の人を巻き込みながら大きな『輪』を作り、『和』やかに寄り添いながら『笑顔』を広げていくことが子育てを楽しくする秘訣の一つではないでしょうか。
「ほっとできる場所」
私自身は郡上生まれの郡上育ち、郡上で就職し結婚、二人の子も郡上の自然と地域の人たちに囲まれて大きくなりました。縁あって、子育て支援にかかわるお仕事をさせていただくようになり、改めて子育てについて学ぶ機会を得て、同時に自分の子育てを振り返るきっかけにもなりました。”これでよかった”と思えること”もっとああすればよかった”と思うこと、どちらかと言えば後者のほうが多いかもしれません。私の子育ての年月を取り戻すことはできませんが、今毎日子育てを頑張っているみなさんに”こんなふうに子育てができたらよかったのかな”と思うことを少しでもお伝えすることができたらと思っています。
子どもが育っていくために大切な家庭の役割って何だと思いますか。あいさつができるようにすること、規則正しい生活習慣やマナーを身につけること、相手を思いやる心を育てること・・・。いろんなことをきちんとできるようにすることはとても大切なことです。ですが最優先すべきことは、子どもにとって家庭が「くつろげる場所」であることではないかと思います。小さいころから厳しくしつけなければと、〇〇しなさい、〇〇してはダメ、と小言ばかり繰り返していては、子どもは家でリラックスすることができなくなってしまうかもしれません。それに、きつく叱ってばかりでは親もつらい、ついイライラしてしまいより厳しいことを言ってしまいそうです。あれもこれもできるようにと欲張りすぎず、家ではほっとできること、安心してくつろげることを優先してみませんか。子どもは「家はいいなぁ、家に帰れば安心できる」と感じることができ、リラックスすることができてはじめて、外へ出ていく元気も出てくるのではないかと思います。まずは家庭の温かさ、家族のぬくもりをたっぷり伝えてあげたいです。心が安定して安心できる親子関係を築くことがしつけを進めていく土台になっていくのではないかと思います。
「泣いても大丈夫」
子育て支援センターが行う事業の中に、あかちゃんを連れたお母さんに中学校へ出向いてもらい中学3年生と触れ合う「あかちゃんふれあい体験」があります。残念ながら新型コロナウイルス感染症対策のため、直接触れ合うことは難しい状況なのですが、それでも今年は「リモート」という形で授業行うことができた学校もあり、画面越しではありましたがあかちゃんとそのお母さんの姿を通して生徒たちも何か心に感じたものがあったように思います。
以前のあかちゃんふれあい体験では多くの学校で授業の終わりに生徒から合唱のプレゼントがありました。どのクラスの歌声も感動的で、それまで泣いていた赤ちゃんもすてきな歌声に静かになることがありました。生徒たちの熱い思いが合唱を通して心に伝わってきたのかもしれません。ことばをまだ持たない赤ちゃんは泣くことで思いを伝えてくれます。みんな同じような泣き声なのにお母さんには我が子の泣き声が聞き分けられるといいます。「おなかがすいたよ」「おしりが気持ち悪いよ」「だっこしてほしいよ」と“ことばにならないことば”もわかるようになってきます。お互いの気持ちが見えないところでちゃんと繋がっているんだな、と感じます。もちろんいつも赤ちゃんの気持ちがわかるわけではないかもしれません。何をしても泣き止まなくて「何で泣いているの?」「どうしたら泣き止むの?」とイライラしたりお母さんの方が泣きたくなったりすることもあるかもしれません。ですがそんな時こそ焦らずゆっくり深呼吸、まずはお母さんがリラックスして、どうしてもだめな時は誰かに助けてもらいましょう。あかちゃんにとって泣くことは自分を発信するための大切な力、泣いたって大丈夫、「今は泣きたいんだね」と受け止め「泣き止ませなくては」と自分自身を追い詰めないようにしてほしいです。一生懸命泣き止ませようと頑張る母の姿はきっと伝わっています。泣くことも合唱の歌声のように「こころを繋ぐ、ことばを伝える手立てのひとつ」と思えたら、少しは気持ちも軽くなるのかな、と思います。
「家族一緒に楽しく食べよう」
暑さと雨続きで外には出かけにくい日が続きましたがようやく心地よい日差しや風が感じられる季節になりました。足早に過ぎていってしまう秋、散歩や近くの公園に出かけてドングリや松ぼっくりを見つけたり、トンボを追いかけたり、草むらの虫の音に耳を澄ませたりと今しかできない体験を親子一緒に楽しみたいですね。また、秋といえば実りの秋。秋に旬を迎える食べ物はおいしいだけでなく、夏の疲れた体を癒し冬に向けての準備をするために必要な栄養がたくさん含まれていると言います。コロナ禍で小さな子の感染も心配される毎日ですが、自身の免疫効果を高め、一日を元気に過ごすためにも「食べること」はとても大切ですね。なにより、おいしそうにたくさん食べる子どもの姿を見ていると、お母さんも幸せな気持ちになります。ですが食べることが好きでよく食べる子もいれば、中には食べることに興味のない食の細い子もいます。大人は何とか食べてほしくてあの手この手で工夫しますが、食事の度に頑張るお母さんも食べさせられる子どももストレスを感じ、せっかくの団らんの時間が苦痛になっては残念です。
栄養バランスよく何でも食べることは心がけていきたいですが、子どもが育つ間にはあまり食べない時期があれば、びっくりするほど食べる時期もあります。子どもは自分の体が必要としているものをちゃんとわかっていて、その時期に応じた食欲が起きてくるともいいます。食の細い時期は食べられるだけで大丈夫、いつもは食べなくてもたくさん遊んだ後だったり、外でのお弁当だったり、何かのきっかけでお腹がすいて「もっとちょうだい」の声が聞ける日もあるのではないでしょうか。その時には一緒に喜んで、食べることの楽しさや嬉しい気持ちを感じさせてあげたいですね。また、今は大勢集まっての会食は避けなければいけませんが、よりおいしく食べる為にもせめて家族そろっての食事を心がけたいです。もちろんそれぞれの事情で難しい家庭もあるかと思います。忙しくて出来合いのお惣菜の時もあるかもしれません。でもそこに家族のやさしい笑顔と楽しい笑い声があれば、それがなによりのごちそうになるのではないかと思います。そして、そんな家族との穏やかな時間が食を豊かにし、子どもが成長していくなかでの大きな心の支えになってくれるのではないかと思います。
「イクメン」
子育て支援センターで毎年秋のイベントとして開催していた「ぐじょうファミリーフェスタ」。子どものこと、家族のことを考えて毎日頑張ってみえるママには子どもと離れて癒しの時間を、お仕事等で子どもとゆっくり関わることが難しいお父さんには触れ合いの時間を持ってほしいとの願いから始まった「ぐじょうファミリーフェスタ」。中部学院大学短期大学部の学生さんや地域のボランティアの方々に協力して頂きながら続けてきましたがコロナ感染防止のため去年今年と開催を中止することとなり残念に思っています。
「イクメン」というワードが流行語になって約10年、パパたちの子育て状況は少しずつ変化し「うちのパパはイクメン」と思う夫婦は約半数と言われています。おむつ替えをしたり、寝かしつけをしたり、卒入園式に出席する姿も多くみられるようになり、休みの日には食事も作ってくれるという羨ましい話を耳にすることも増えてきました。ただ、一生懸命頑張っているつもりのパパの自己評価は高くても、ママからの評価は低いということもありがちです。ちゃんとやっているのになぜ?と思うパパもみえるかもしれませんが、足りないのは家事や育児の量だけとは限りません。ママの家事が一段落したときの「お疲れ様」など労いの言葉だったり、日々の忙しさ、大変さを分かってもらう事だったり、それだけでママの気持ちは穏やかになるのではないかと思います。またパパがいいと思ってやることとママがやってほしいことが違うこともあります。そうした気持ちのズレは話し合う時間を持つこと。お互いの気持ちを知ることで、思いやることもできるようになるのではないかと思います。一緒に悩んで考えて、役割分担はあるかもしれませんが、お互い「ありがとう」の言葉を忘れずに、そしてできない時には補い合っていけたら素敵ですね。子どもは、お父さんお母さんが大好きです。家族が笑顔でいてくれることで安心し、家庭の温かさや心地よさを感じ、それを心の栄養にして育っていきます。寒い季節になりますが、家庭の中は温かく家族みんなが安らげる居場所であってほしいです。